「アイデアの作り方」(ジェームズ・ヤング著)という本があります。帯に「60分で読めるけど一生あなたを離さない本」というコピーだけが書かれてある、とてもとても薄い本です。わずか1,100円、本当に小一時間で読み切ってしまう本なのですが、これが、私にとってはバイブルのような一冊なんです。


広告やデザイン業でもない限り、手に取ってお読みになる機会は少ないかもしれません。語れば長くなりますが、私はこの本は、人間の感覚値やヒューリスティックをフル活用する為の教科書だと思っています。
五感とか感性、感覚値、職人の勘(野生の勘?)なんとなく感じる予感とか。
私たちは日々、経験値によるヒューリスティック分析や暗黙知など、身体に収められている数値化できない情報を、無意識下で活用しながら生きていますからね。
本に書いてある内容を、ざっくり説明すると・・・
いいアイデアを思いつきたいとか、クリエイティブな活動で成果を出したい時に踏むステップの解説です。
■第一段階 = 情報収集
■第二段階 = 次に、それを俯瞰しながら、めちゃくちゃ考える。短い時間でよいので、真剣に思考を巡らすのが大事。
(本書では、シャーロック・ホームズの探偵小説に出てくる事件をプロファイルしたスクラップブックと記載されています)
■第三段階 = スパッと忘れる。もう考えるのを止めて他の仕事をしたり、お風呂に入ったりする。
(本書では、諸君は問題を完全放棄し、心の中から追放せよとあります)
■第四段階 =ふとした瞬間にアイデアが降ってくる
実はこの方法、ちゃんと効果がある事が脳科学的にも証明できるんです。2000年代以降の話なのですが、エビデンスも揃うようになってきたそうです。
主に、脳のRAS(網様体賦活系)とデフォルト・モード・ネットワーク機能(DMN)という脳の働きによって、人は関心を寄せた情報を意識して収集するようになりますし、リラックスしている時の無意識下で情報整理を行っている事がわかっています。
初版が1988年ですから、30年以上前に書かれた書籍です。当時は、科学的な根拠なんて無かったと思います。著者の経験から得られた公式だと記されていますが、大量行動から導き出された経験値が、後に科学的に証明されるって、凄い事ですよね。
正直に言うと、一番最初に読んだ時は「ふーん」という感想しか沸かず、この本が、クリエイティブを抽出するプロファイリングシステムである事に、全く気づいていませんでした。
その後、商業デザインの世界に28年従事して、クライアントとのイメージ調整を散々行って参りましたので、今となってはハッキリ断言できます。
自分の発想の壁を破り、アイデアを絞り出す方法は、この本に書いてある方法以外、他に無いと思っています。
これから、AI技術の戦国時代に入ったとしても、人間の基本的な成長は試行錯誤した分しか伸びないという基本は、何も変わらないのではないでしょうか。
情報収集の量、思考の量、アウトプットの量、体験の量、体験と向き合った量。
これらは、ちゃんと自分の血肉になって、アイデアという形で帰ってきてくれると、この本の表紙を見る度に勇気づけられるのです。
裏表紙の帯にはこう書かれてあります。私の印象も全くこの通りでした。もし書店で見かけたらぜひご一読されてみてください。
この薄い本の中に「アイデアのつくり方」についての必要にして十分な内容がもられている。そのあまりのみごとさに、私はびっくりしてしまった。竹内均 (引用 / 書籍の裏帯より)


脳のRAS(網様体賦活系)
デフォルト・モード・ネットワーク機能(DMN)
デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network: DMN)とは、脳が「ぼんやりしている状態」や「内省している状態」の時に活性化する脳の神経回路のこと。https://studyhacker.net/what-is-dmn
