ピカソがまだ売れない画家だった頃の話です。
パリ時代(活動初期、洗濯船と呼ばれる安アパートで貧しい暮らしだった頃)なかなか芽が出ない状況を打破する為に、ステルスマーケティングのようなものを展開したそうです。
バイトを雇い、パリの街中の画廊を廻って「ピカソの絵は置いてるか?」と声をかけて貰ったそうです。すると画商の間で「ピカソって誰?」という話の流れが生まれ、次第に良い場所に飾ってもらったり、売れるようになっていったという逸話です。
このエピソードは事実かどうか定かではないそうですが、商売上手だったピカソの個性をよく表していると思います。


この逸話が巧妙なのは「誰かが探している→需要があるはずだ」というバンドワゴン効果の『発火点』を「誰も評価を語っていないのに」「本人も売り込んでないのに」「実績ないのに」用意している事です。
職業柄、素敵なイラストレーターが活動しなくなってゆくのを沢山見てきました。商業世界で発生するナンセンスな出来事に精神を圧し折られてしまったのだと思います、そんな絵描きを大勢存じています。その方達が語ってくれる、アート的な活動と実益を結びつける事の難しさを思うと、いかにピカソが人の認知の癖をよく理解し、マーケティング的な才能があった人なのかを、噛み締めずには居られません。
良い作品なら自然に評価されるというのは幻想だし、実際の市場では、価値より先に『注目』が必要です。(悲しいけど現実です)
そして、皆が欲しがってるから自分も欲しいというバンドワゴン効果は、特に不確実な世界で強く働くように思います、ファッションとかね、正解が無い世界で。
現代のマーケティングでも、やってる事は同じですよね。「問い合わせが来ている雰囲気」「名前が挙がる状況」「選ばれている感」をいかに演出するかが大事です。マーケティングとは別に嘘をつくことではなく、人の心理を理解して、情報提供の順番を設計することなので。
ピカソの他のエピソードを読んでも、このマーケ的なセンスがすごく長けているように感じます。
貧すれば鈍すると言いますよね。実際、その通りかもしれませんが、ピカソのように貧困時代を経て、いくつかのきっかけを得て商売が上手くゆくようになり、人に恵まれ経済的に安定していった経営者が沢山いる事もまた事実です。ピカソもアーティスト魂とビジネスセンスを両立させ、巨万の富を築いた画家となりました。 (ゴッホとは対照的)
21世紀の商業デザイナーにとっても、学ぶべき点が多い先達だと思います。




《突然ですがクイズです》質問の答えを以下の中から選んでね。
バンドワゴン効果とは?
《A》みんなが持ってるから自分も欲しくなるという行動心理のこと。
《B》自分だけのオリジナル品や限定品が欲しくなるという心理のこと。
《C》ワゴン車(自動車)が一定の速度で走行している時、ハンドルを一定の速度で回していった時の車の軌跡のこと。
答え 《A》
正解はAです!
ちなみに、Bは「スノッブ効果」のこと。
みんなが持っていないものが欲しくなるという心理の事で、Cは「クロソイド曲線」のことです。
皆さん、ピカソのこのエピソードで、もうバンドワゴン効果の意味を覚えましたよね!
